三峰山 永昌庵
「雪を擔うて古井を塡む」
今年も二月の中盤になりました。
皆さまいかがお過ごしでしょうか?
私の住む南魚沼市は雪国として知られており、毎年この時期は建物が半分埋まってしまうほどに雪が積もります。
その雪の多さから「雪かき」ではなく「雪掘り」と言い、朝に起きて雪掘りをし、さて仕事に出ようかと思って外に出ると元通り……と言うこともざらです。
そんな時、私は
擔雪塡古井(ゆきをにのうてこせいをうずむ)
と言う雪に纏わる禅語を思い出します。
この言葉は、雪をかついで井戸を埋めると言う意味の禅語ですが、井戸の中に雪を投げ入れてもたちまち雪は水になり、いくら入れようとも埋める事はできません。
一見、愚かに見えるこの行為ですが、案外誰しも同じような事をしているのではないでしょうか?
私も、この地域に来た頃、この雪掘りが大変で、なんとかならないかと色々な思考を巡らせた事がありました
「消雪パイプをもっと増やせないか」
「冬だけ人を雇うと言うのはどうだろうか」「井戸をもう一つ掘れば良いのでは」
……と考えてゆく内に
「いっそ山を削れば雪が減るのでは?」
…と言う考えに至った時「何を馬鹿な」と、自分の欲の深さに呆れてしまいました。
雪で井戸を埋めると言うのは、確かに愚かな行為かもしれません。
しかし、より良い事ばかり求めてゆけば、それこそ、心の欲の井戸を雪で埋めようとしている様なものです。
便利なものや、合理的なものを求める事は決して悪い事ではありませんが、そればかりを求め過ぎれば、大切な今を見失う事にもなりかねません。
擔雪塡古井(ゆきをにのうてこせいをうずむ)
それを愚かな行為だと思う自分自身もまた、思考の中で同じ事をしているのかもしれません。
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古物法話『わらう木像』※古美術雑誌「小さな蕾」掲載| 名称 | 三峰山 永昌庵 |
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